VDSLは多くの集合住宅で利用されているインターネット接続方式ですが、その通信速度の遅さに悩んでいる方はとても多いです。
この記事では、VDSLの基礎知識、なぜ通信速度が遅くなるのか、速度改善のための具体的な方法を解説します。
ネット環境を見直し、より快適な通信環境を構築するためのヒントとして参考にしてください。
この記事で分かること
- VDSLは光回線なのか?
- VDSLの通信速度が遅い理由と改善策
- 屋内配線種別の簡単な見分け方
- VDSLの速度に悩んでいる方におすすめの乗り換え先 など
VDSLとは?VDSLは光回線ではないの?
VDSL = Very high-bit-rate Digital Subscriber Line
建物の共用部までは光回線が引かれ、その後、一般電話回線(メタルケーブル)を介して各家庭や部屋にインターネットを届けるサービス提供型です。
これをFTTC(Fiber to the Cabinet)やFTTN(Fiber to the Node)と呼ぶことがありますが、屋内配線部分にメタルケーブルが使われるため、VDSLの最大通信速度は、最大100Mbpsです。
便宜上「光回線の一部」として扱われることもありますが、正式にはDSL技術の一種としてメタル回線のカテゴリーに属します。
VDSLの仕組みを分かりやすく解説
画像引用:NTT西日本 公式サイト
VDSL方式では、建物の共有部分までは光ファイバーが敷設されていますが、各戸への接続には既存の電話回線(メタル線)を利用します。
これにより、光ファイバーの高速通信を一部享受できるものの、建物内部の電話回線部分で通信速度が制限されるという特徴があります。
VDSLは、建物内の電話回線を使ってデータを送受信するため、光配線方式よりも速度が遅くなる傾向があります。
光配線方式の建物では、各部屋まで光ケーブルで配線されています。
画像引用:NTT西日本 公式サイト
屋内配線方式による通信速度の違い
光配線方式は、インターネット回線が建物の共有部分から各家庭まで光ファイバーで直接引かれる方式です。
このため、光ファイバーの特性を最大限に活かした高速通信が可能で、VDSL方式よりも安定した速度を提供します。
一方、LAN配線方式では、共有部分から各家庭まではLANケーブルで接続され、こちらもVDSLと同様に最大通信速度は100Mbpsが主流になります。
配線方式 | 屋内区間の 最大速度 |
使用するケーブル |
VDSL方式 | 100Mbps | メタルケーブル |
LAN配線方式 | 100Mbps | LANケーブル |
光配線方式 | 1~10Gbps | 光ケーブル |
-
メタルケーブル
-
LANケーブル
-
光ケーブル
VDSL方式の簡単な見分け方
VDSLかどうかを見分ける方法は比較的簡単です。
まず、壁とインターネット接続機器に接続されているケーブルを確認してください。
壁に設置された通信用のコンセントにモジュラージャックが使われていて、電話線(RJ-11コネクタ)が接続されている場合は、VDSL方式です。
また、インターネット契約時の資料やプロバイダーの情報でも、VDSL方式であるかどうかが確認できます。
さらに、回線事業者から貸与されているモデムやルーターの型番をインターネットで検索すると、その機器がVDSL対応かどうかを調べることもできます。
VDSLの通信速度が遅いのはなぜ?
繰り返しになりますが、VDSLの通信速度が遅い主な理由は建物内の配線にあります。
特に集合住宅では、配線の品質や長さ、建物内の回線混雑状況が大きく影響します。
一般電話回線を使用しているため屋内配線部分がボトルネックになる
VDSLでは、屋内配線に一般電話回線を使用してデータ信号を伝送します。
この電話回線は、元々音声信号を伝えるために設計されたものであり、データ通信には適していません。
そのため、データ信号が通過する際に速度が低下しやすくなり、これが通信速度のボトルネックとなります。
特に、古い建物では電話回線の老朽化が進んでおり、これがさらに速度低下を招く要因となっています。
メタル線は光ファイバーに比べてノイズの影響を受けやすいため
VDSLで使用されるメタル線(銅線)は、光ファイバーに比べてノイズの影響を受けやすいという弱点があります。
例えば、電化製品や電子機器から発生する電磁ノイズがメタル線に干渉すると、信号が劣化し通信速度が低下することがあります。
また、メタル線は距離が長くなるほど信号の減衰が激しくなるため、建物の通信機械室から部屋までの距離が遠い場合、配線が長くなり、通信速度がさらに低下する可能性があります。
これも、VDSLの通信速度が遅い理由の一つです。
光ファイバーの中に流れる光信号は、電磁ノイズやケーブル長の影響をほとんど受けません。
- メタル線:電気信号でデータを伝送
- 光ファイバー:光信号でデータを伝送
今使用している回線の通信速度測定方法
現在使用しているインターネット回線の速度を測定する方法はいくつかあります。
最も簡単な方法は、インターネット上の速度測定サイトを利用することです。
「Speedtest by Ookla」などのサイトにアクセスし、測定ボタンをクリックするだけで、現在の下り(ダウンロード)速度、上り(アップロード)速度、応答時間(Ping値)を確認できます。
また、ブラウザからGoogle検索で「インターネット速度テスト」と検索することで、Googleが提供する測定ツールを利用する事もできます。
VDSLの通信速度を上げる方法と抜本的な改善策を解説
今すぐできる簡単な対策から、根本的な解決策までを紹介します。
試してみたい改善策
- ルーターをハイスペックなものに変更する
- LANケーブルを使った有線接続で使用する
- IPv6 IPoE対応のプロバイダーに変更する
- DNSサーバーを変更してみる
- モジュラーケーブルはなるべく短くする
- 戸建て向けのプランで契約する(抜本的な改善策)
ルーターをハイスペックなものに変更する
現在使用しているルーターが古く性能が低い場合は、通信速度に影響を与える事があります。
特に、複数のデバイス(パソコンやスマホなど)を同時に接続する場合や広い範囲でのWi-Fi利用が必要な場合には、高性能ルーターの導入が効果的です。
複数のアンテナを使用して同時に複数のデータを送受信したり、特定のデバイスに向けてWi-Fi電波を集中させることで、通信品質を向上させるビームフォーミングなどが利用できます。
ルーターの設置場所も、電波の届きやすい見通しの良い場所に配置することで、通信の安定性が向上します。
LANケーブルを使った有線接続で使用する
VDSLの速度を改善するための最も簡単な方法の一つは、Wi-Fi接続ではなく、ルーターとパソコンやテレビなどのデバイス間をLANケーブルを使って有線接続にすることです。
有線接続にすることで、Wi-Fiのような無線接続に伴う信号の干渉や減衰を避けることができ、安定した通信速度が得られます。
特に、オンラインゲームやオンライン会議など、安定した高速通信が必要な場合には有線接続がおすすめです。
参考光回線で有線LANを使うためのポイントを全解説!Wi-Fiとの比較や速度が遅い原因は?
IPv6 IPoE対応のプロバイダーに変更する
IPv6 IPoEは、従来のIPv6 PPPoE方式よりも混雑が少なく、通信がスムーズになるため、IPv6 IPoE接続に対応したプロバイダーに変更することもVDSLの速度改善に有効です。
これにより、混雑時でもでも安定した通信が可能となります。
特に、動画配信サービスの視聴やオンラインゲームのプレイ時に、速度低下を防ぐためにIPv6 IPoE対応のプロバイダーを選ぶことをお勧めします。
プロバイダーのみの契約変更はオンライン上で簡単にできる場合が多いですが、建物の屋内配線は変わらないため、通信速度100Mbpsの上限値は変わりません。
現在の回線が、IPv6 PPPoEで接続中かは、@niftyが提供しているアクセス状況確認ページで確認する事ができます。
IPoEは高速で安定した接続が可能な新しい接続方式で、PPPoEは従来から広く利用されてきた方式です。
通信速度や安定性を重視する場合は、IPoE接続がおすすめです。
モジュラーケーブルはなるべく短くする
VDSLの速度改善には、モジュラーケーブルの長さを見直すことが非常に効果的です。
メタルケーブルは距離が長くなれば、なるほど信号が減衰し、速度が低下する原因となります。
壁のモジュラージャック(ローゼットとも言います)から、ホームゲートウェイに接続されているモジュラーケーブルは、なるべく短い物を使用した方が伝送損失は少なくなります。
特に、古いタイプのケーブルを使用している場合は、劣化が進んでいることがあり、その影響で速度がさらに悪化している事があります。
もし、長いケーブルをグルグルに束ねて使用しているようであれば、なるべく短いケーブルに交換してみてください。
ネクタの種類はRJ-11とRJ-12の物がありますが、家庭用に使用するのは、ほぼRJ-11です。
DNSサーバーを変更してみる
DNSサーバーは、インターネット上の住所録のようなもので、ドメイン名(例:https://www.google.com)をIPアドレス(例:142.251.42.195)に変換します。
通常は、契約しているプロバイダーが提供するDNSサーバーが使われますが、これを他のサーバーに変更することで通信速度が向上する場合があります。
PCやスマホなど端末側での設定が必要です。
Google Public DNS(8.8.8.8・8.8.4.4)やCloudflare DNS(1.1.1.1)などの公開DNSサーバーを使用することで、通信速度が速くなることがあります。
macOS
アップルマーク→システム設定→ネットワーク→変更対象となる接続を選択→詳細→DNSタブ→+ボタン→新しいDNSサーバーの設定を追加
Windows
スタートメニュー→設定→ネットワークとインターネット→ハードウェアのプロパティ→DNS サーバーの割り当て→編集→手動に変更→IPv4オンにする→新しいDNSサーバーの設定を追加
IPv6も同様の手順
戸建て向けのプランで契約する(抜本的な改善策)
VDSLから戸建て向けの光回線に変更することも一つの選択肢です。
戸建て向けのプランでは、光ファイバーが直接自宅まで引き込まれるため、ボトルネックとなっている屋内配線部分を経由しない回線構成になります。
ただし、戸建て向けのプランに変更する際には、最寄りの電柱から光ファイバーを直接部屋に引き込むための工事が必ず必要になります。
コア抜きと言って壁に穴を開けたり、引き留め金物を取り付けするためにビス留めをしたり等の工事が発生する事が多く、集合住宅の場合は、オーナーや管理会社の工事許可が必須となります。
また、月額料金もマンションプランに比べて戸建向けプランは高くなる点にも注意が必要です。
参考光回線開通までのつなぎは無料Wi-Fiレンタルがある会社で乗り切ろう!自分でレンタルする場合の注意点も解説
工事で光配線方式に変更してもらうことはできる?
屋内配線をメタル配線から光配線方式に切り替えることで、根本的な速度改善が期待できますが、
屋内配線を含む通信設備は、水道管などと同じで物件の設備なので、入居者個人が変更したくても基本的には変更できません。
また、光配線方式への切り替えには、配管内や壁の中に埋設されているメタルケーブルを引き抜き光ファイバーを敷設し直します。
さらに、お部屋に光コンセント設置したり等、大掛かりな工事が必要となり、基本的には一戸のみでは行わず、マンション全体で行うことになるケースがほとんどです。
工事期間中は既存のインターネット回線が利用できなくなるといったデメリットもあるため、屋内配線の切り替えは物件の大幅なリノベーション時などに合わせて行うことが多いです。
VDSLの乗り換え先としておすすめの回線(宅内工事不用)
VDSLの速度に不満がある場合の乗り換え先として、検討すべき対象をピックアップしてみました。
ボトルネックとなっている屋内配線部分を使用しないネット回線選べば、100Mbpsの上限値からは解放される事になります。
おすすめの乗り換え先
- J:COM NETの同軸ケーブルを使用した1Gプラン
- auひかり(タイプG)対応の物件ならauひかり
- ご自宅が5Gのエリア内なら5Gホームルーター
J:COMの同軸回線利用で光に匹敵する1Gbpsを実現
同軸ケーブルを使用したインターネット回線は、ノイズに強く、長距離でも信号の減衰が少ないため、通信速度の向上が期待できます。
VDSLに比べて速度が速く、安定性も高い、有力な乗り換え先の一つと言えます。
J:COM導入済みの物件なら、原則工事不要で最大1Gbpsの回線速度で利用可能です。
屋内配線に同軸ケーブルを利用したプランは以下の2つです。
- 1Gコース:下り最大1Gbps/上り最大100Mbps
- 320Mコース:下り最大320Mbps/上り最大10Mbps
注意:320Mbpsのプランは、上り側が最大10MbpsのためVDSLより遅くなります。この点に注意するようにしてください。
参考J:COM NETってどんな回線?メリット・デメリットから口コミ・評判まで全て解説!
既存のテレビ用回線を利用して最大1Gbpsの速度で利用可能
一般的な住宅のお部屋には、通信用の配線の他にテレビ用の配線がされており、2種類のコンセントが設置されています。
TV用に配線された同軸ケーブルのコンセントを通信回線用に利用することで、最大1Gbpsの通信速度で利用できる可能性があります。
VDSLの通信速度が最大100Mbpsと考えると、10倍の1Gbpsはかなり魅力的です。
J:COM NETなら通信経路が異なるためVDSLとの2回線同時利用も可能
- J:COM NET:テレビコンセント使用
- VDSL:モジュラージャック使用
J:COM NETはテレビコンセント、VDSLはモジュラージャックを使用するため、お部屋からインターネットに接続するまでの通信経路が異なります。
実際に使用して通信速度を確認し、期待した速度が出ない場合は、8日以内であれば初期契約解除制度により違約金なしでキャンセルが可能です。
この制度は、消費者保護のために電気通信事業者法で定められているものです。
参考【やっぱり辞めたい】光回線の申し込み後キャンセルは8日以内なら無条件でできる
建物の屋内配線そのままで速度を上げるG.fastとは
G.fastとは、建物の通信機械室(MDF室)に、G.fast専用の親機(DPU)と、宅内側にもG.fast用の専用機器(CPE)を設置することで、屋内配線のメタルケーブルはそのままで速度を上げることができる構成です。
auひかりのマンション タイプGという名称でKDDIが提供していて、下り664Mbps、上り166Mbpsの通信速度で利用可能です。
マンションタイプGに対応しているプロバイダーは、au one net、So-net、@nifty、BIGLOBE、の4社のみです。
G.fast導入済みの物件はこちらから以下の提供エリア確認からできます。
- 郵便番号を入力(電話番号の入力は任意)
- マンションを選択
- 提供エリアの確認をタップ
マンション名の後ろに「マンションG16」と表示されている物件がタイプG導入の物件です。
G.fast未導入の物件でも、屋内配線の張り替えが必要ないため、比較的簡単な工事とリーズナブルな価格でVDSLを高速化することができます。
エリアによっては5Gホームルーターの利用が有効
エリアによっては、5Gホームルーターを利用することで、VDSLの速度を超えられる可能性があります。
5Gホームルーターは、宅内に設置するだけで、面倒な配線工事が不要で、簡単に高速インターネットが利用できます。
ただし、無線インターネットは、さまざま要因により思うような通信速度が得られないケースもあります。
2Gbpsを超える通信速度で訴求されている事が多いですが、この速度は理論上の最大通信速度なため、この速度が出ることはありません。
筆者の個人的な観測によると、表示されている最大通信速度の1/5程度が実測値の最大となることが多いです。
参考最強の無制限ホームルーターはコレ!現役通信技術者が選ぶ最新おすすめランキング
【まとめ】VDSLの速度改善方法とおすすめの乗り換え先
VDSLの通信速度に悩んでいる場合、まずはその原因をしっかりと理解し、できる限りの改善策を試してみるようにしてください。
根本的な解決が難しい場合は、他の回線への乗り換えを検討することも選択肢の一つです。
試してみたい改善策
- ルーターをハイスペックなものに変更する
- LANケーブルを使った有線接続で使用する
- IPv6 IPoE対応のプロバイダーに変更する
- DNSサーバーを変更してみる
- モジュラーケーブルはなるべく短くする
- 戸建て向けのプランで契約する(根本的な解決)
おすすめの乗り換え先
- J:COM NETの同軸ケーブルを使用した1Gプラン
- auひかり(タイプG)対応の物件ならauひかり
- ご自宅が5Gのエリア内なら5Gホームルーター
参考リンク