光回線は、収容局からの距離によって通信速度が変わると思われている方はとても多いですが、実は距離による影響はほとんどありません。
この記事では、光回線の通信速度に影響を与える要素と、その解決策について詳しく解説します。
収容局から利用場所までの距離は通信品質に関係ある?
結論、距離による速度への影響はほとんどない
ADSLなどのメタル回線は電気信号なので、距離に比例して伝送損失は大きくなりましたが、光回線に関しては光信号のため距離による速度への影響は非常に少ないです。
ただし、距離による影響が全くない訳ではありませんし、ファイバーの曲げや、接続点などで信号の減衰が発生する事があります。
宅内側で受光レベル(dBm)が適正範囲内に納まっていれば速度にほとんど影響はありませんが、受光レベルは強すぎても低すぎても問題が生じます。
光のレベル測定には、OTDRと呼ばれる特別な測定装置を使用して測定し、レベルが高すぎる場合にはアッテネーターと呼ばれる光レベルを抑える装置を間に入れ適正範囲内に収めます。
光回線の局は何と呼ぶのが正しい?基地局?
「基地局」は一般的にモバイル通信で使用するアンテナ設備などを有した「無線通信基地局」をさすため、光回線の通信局舎の呼称としては一般的ではありません。
光回線で使用される通信局舎は「収容局」などの言い方が正しいです。
NTTの場合はGC(GC:Group Unit Center)と言ったり、NTT以外では、ネットワークセンターや、アクセスポイント局という呼び方をする場合もあります。
アナログ回線全盛期の時代には「電話局」「交換局」などとも呼ばれていました。
光回線の収容局は何をする場所なの?
ユーザー宅と収容局を光回線で結び、光信号を電気信号に変換しインターネットのネットワークに接続します。
利用場所の住所によって、どこの局に収容されるかは予め決まっており、周辺地域の光ファイバーは当該エリアの収容局に一度集約されます。
ロス値(dBm)や、電柱に付いているクロージャーの位置関係などによって異なる場合がありますが、基本的には距離的に最寄りの収容局に入るように設計されています。
また、インターネットに接続するためは、光信号のままでは接続できないので、光信号を電気信号に変換してあげる必要があります。
そのため、光信号を送受信するための設備だけではなく、光信号を電気信号に変換するための装置なども置いてあります。
実はスマホの基地局も光回線を使用している
スマホの無線基地局は、実は光回線を使用しています。
端末(スマホ)からの信号を電波として受信し、信号を光回線を通じて通信会社の収容局に送信しています。
インターネットに接続するためには、一度信号を収容局に持っていく必要があるためです。
光回線以外に衛星や電波を使用する場合もありますが、一般的は光回線を使用しています。
このように、光回線はスマートフォンの高速で安定したインターネット接続を実現するための、重要な要素となっています。
最寄り電柱から自宅までの距離が遠い場合は使えない?
電柱の距離や地形は光回線の敷設に影響する事がある
光回線の設置には、自宅から最寄りの電柱までの距離と地形が重要な要素となります。
物理的な光ファイバーを引き込むため、電柱と自宅の距離が長すぎると設置が困難になる可能性があります。
通常、電柱は約30〜50mごとに設置されていますが、最寄り電柱から利用場所までの距離が遠すぎる場合は、新たな引き込み柱の設置などの対策が必要となることがあります。
また、急な坂や川などの自然障害物がある場合も設置が困難になる可能性があります。
そのため、光回線の設置は、距離だけでなく、その他の要素も考慮する必要があります。
現地調査なしの場合、工事日当日に敷設中止になることもある
光回線の工事は、現地調査を含む複数の工程から成り立っています。
現地調査を省略して引き込み工事を行なった場合は、工事当日に問題が発覚する可能性があります。
よくある事象としては、「最寄りの電柱から引き込み場所まで、想定してた以上に距離が長く引き込む事ができない」という事が発覚する事があります。
この場合は、当日の工事は中止にし、引き込みルートを変えたり、引き込み柱を建てたり等の対応を取り、後日改めて工事を行うことになります。
光回線が引けない物件や地域にはモバイルインターネットがおすすめ
最寄り電柱からの距離が遠かったり、物理的な理由で光回線を利用できない場合は、電波を使ったモバイルインターネット回線の利用がおすすめです。
一部の光回線よりも高速な場合がある5Gのモバイル回線
モバイル回線は5Gの登場により、一部の光回線よりも高速な通信が可能になる場合があります。
5Gはご存知の通り、次世代のモバイル通信技術で、高速大容量・低遅延・多接続性を実現します。
5Gは電波さえ届けば高速な通信が可能である一方、電波を使用して通信をするため、通信の安定性は光回線に劣ります。
一方光回線は、物理的な光ファイバーを敷設する必要がありますが、通信の安定性に優れています。
ローカル5Gの技術では屋内配線すら不要になる
ローカル5Gは、特定のエリア内での高速な無線通信を可能にする新しい技術です。
例えばマンションの場合、従来は建物の通信機械室(MDF室)から各家庭までは、必ず光・メタル・LANケーブルの配線処理が必要でした。
ローカル5Gの技術を活用することで、配線ケーブルの代わりに5Gの広帯域な電波をします。
これにより、従来の有線の屋内配線に頼ることなく、高速なインターネット接続を実現することが可能になります。
ローカル5Gの導入には、専用の基地局の設置や周波数帯の確保など、一定の課題も存在しますが、施設の設計や運用の自由度が増し、工事コスト削減や効率化につながる可能性があります。
(まとめ)距離による速度への影響はほとんどなし
まとめ
- 光回線の通信速度は収容局からの距離にほとんど影響されない。
- 光ファイバーの曲げや接続点で信号の減衰が発生することがある。
- 電柱と自宅までの距離が長すぎると光ファイバーの敷設が困難になる可能性がある。
- 光回線が利用できない場合は、モバイルインターネット回線の利用がおすすめ。
- ローカル5Gの技術を活用することで、配線ケーブルの代わりに5Gの広帯域な電波を使用し、高速なインターネット接続を実現することが可能になる。
参考リンク
- 光ファイバ通信のしくみと光スペクトル測定:https://tmi.yokogawa.com/jp/library/resources/measurement-tips/mechanism_of_optical_fiber_communication_and_optical_spectrum_measurement/
- 光ファイバ、dB、減衰と測定の概要:https://www.cisco.com/c/ja_jp/support/docs/optical/synchronous-digital-hierarchy-sdh/29000-db-29000.html
- 光伝送技術について:https://www.apresia.jp/technical/transmission/